社内通貨・ピアボーナス制度導入のメリット、デメリットについて

エンジニア向けのSNSであるQiitaに、「GAS(GoogleAppsScript)で「社内通貨」を作ってみた話」という記事を掲載したところ、多くのご意見やご質問をいただきました。今回は、その中でも多くいただいた「社内通貨・ピアボーナス導入のメリット、デメリット」について詳細に記事にしてみます。

はじめに 社内通貨・ピアボーナスとは

社内通貨、ピアボーナスともにまだ新しい概念であり、はっきりとした定義は定まっていないと思われますが、今回の記事においてはおおよそ以下のようなイメージで取り扱います。

社内通貨とは

文字通り、社内で使われる通貨です。日本円や米ドルと同様に物理的な紙やコインの形を持っているものの他に、いわゆる「電子マネー」のように専用のアプリやブラウザ上のWebサービスを通じて保管や流通を行なっているものも含みます。

ピアボーナスとは

アメリカを中心とした海外で誕生した概念で、ピア(peer=同僚)からもらうボーナスを表します。同僚の働きぶりなどに対する賞賛や感謝の気持ちとして、専用のシステムを通じてボーナスを送りあうことができます。貯まったボーナスは、会社ごとに定められたルールに基づき賞与や商品に交換することができます。

社内通貨・ピアボーナスの共通点と違い

共通点

社内通貨・ピアボーナスともに、「一つの会社や組織内でのみ通用」し、「同僚や上司・部下間でやり取り」されるという点では共通していると考えられます。日本円や米ドルであれば、社内外を問わずどの場所でも誰にとっても価値のあるものですが、社内通貨・ピアボーナスに関しては社外の人や退職した社員にとっては無価値となると言えます。このことは、保有する社内通貨やピアボーナスの価値がそこまで大きくならず、「貯める」インセンティブが高まらない性質となる一方、そのような性質だからこそ気軽に社員間で「送りあえる」ような設計になっているとも言えます。従って、社内通貨・ピアボーナスともに、賞与や商品などの経済的なインセンティブが主目的とはならず、社員間のコミュニケーション活性化に主眼を置いた制度であると考えられます。

また、社内通貨やピアボーナスのやり取りの履歴がシステム上に記録され、利用者内で公開、共有されることにより、「誰がどのような働きに対して通貨、ボーナスをもらっているのか」が可視化される仕組みになっていることが多いようです。普段の業務を行なっているだけでは知り得なかった同僚の活躍ぶりを見ることができると言えます。

相違点

社内通貨は、「通貨」であることから、日本円や米ドルと同様に、自分が保有する通貨を相手に渡せば自分の通貨は減少します。会社やシステムから一定の期間や一定のルールにより与えられる他、働きぶりによって他の社員からもらうことで通貨を貯めることができ、賞与や商品との交換を行うことができます。

一方、ピアボーナスは、それ自体はあくまでも「ポイント」のようなものであり、誰かにポイントを渡したとしても自分のポイントが減少することはありません。多くの場合、週や月のような期間ごとにポイントが会社やシステムから各社員に付与され、そのポイントを誰かの仕事ぶりに対してそのポイントをプレゼントすることができます。会社やシステムから付与されたポイントは自分のボーナスとすることはできず、誰かから受け取ることにより初めてボーナスとなり、それを貯めることにより賞与や商品との交換を行うことができます。

制度導入のメリット、デメリットについて

導入のメリット

社員のエンゲージメント向上

エンゲージメントとは社員の会社に対する帰属意識や愛着といった気持ちを指します。社員のエンゲージメントの高い企業は優秀な業績を残し、またエンゲージメントの高い社員は優秀な成績を残す傾向にあります。通貨やボーナスのやり取りの履歴が公開されることにより、普段はあまり目立たないように見える人であっても、実は多くの人から評価され、感謝されていることが可視化されることがあります。「縁の下の力持ち」的な仕事が陽の目を見ることになることで自分の仕事に誇りを持てるようになり、よりやりがいを持って日々の業務に向き合うことができ、エンゲージメントの向上に繋がることが期待できます。

(参考)

従業員エンゲージメント-BizHint(ビズヒント)

社員のスキル向上

通貨やボーナスを貯めることで賞与や商品などの経済的な利益を得られる場合、出来るだけ多くの通貨やボーナスを得ようと頑張るインセンティブが生まれます。このことにより、社員が自身のスキルを磨く意識が高まったり、社員間で研究成果やアイデアの共有の活性化が期待できます。

社員の生産性向上

自身の貢献度や業務が可視化されることにより、生産性を意識して業務を行うインセンティブが高まります。また、社員間のネットワークが可視化されることにより、「この社員とこの社員は実は多くのやり取りがある」など、組織を最適化するためのヒントを得られる可能性があります。

導入のデメリット

コストの増加

社内通貨、ピアボーナスを導入する場合、多くは既存の給与や賞与は据え置き、これに加える形になることと思われます。従って、導入前と比較すればコストは増加しやすいと考えられます。生産性の向上により時間外手当が減少し、相殺されて全体では変わらない可能性もありますが、基本的にはコスト増を覚悟する必要があると言えるでしょう。

「社内副業」に熱心な社員の出現

通貨やボーナスを貯めることで賞与や商品などの経済的な利益を得られる場合、出来るだけ多くの通貨やボーナスを得ようと頑張るインセンティブが生まれます。このことは、上記の通り社員がスキルを向上させようとすることにつながるメリットがありますが、一方で、通貨やボーナスを荒稼ぎしようと本来与えられた仕事以外の仕事、いわば「社内副業」に熱心になってしまう社員が出現する恐れがあります。

管理職の力の弱体化

従来のサラリーマンであれば、普段の働きぶりを上司に評価され、その成績により昇給や賞与の額が決定されます。このことにより、良くも悪くも管理職が力を持つことができ、その力を背景に部下への指示命令を行うことで組織が出来上がり、規律ができていると言えます。しかし、社内通貨やピアボーナスのような仕組みが導入され、社員の得る収入のうち、本業の給与や賞与の占める割合が幾らか低下すると、その分だけ管理職の持つ力が低下することになります。このことにより、管理職の行う支持命令の強制力が弱まり、結果として組織力の弱体化に繋がる恐れがあると考えられます。

実際の社内通貨・ピアボーナスの事例

Will

http://www.disco.co.jp/jp/news/press/20170303.html

株式会社ディスコが自社内で導入している社内通貨システムです。ディスコ社では、「個人Will会計制度(個人別採算制度)」が導入され、あらゆる業務や備品までもが値段がつけられ、通貨「Will」により支払いや発注が行われているとのことです。

Unipos

https://unipos.me/ja/

Fringe81株式会社の提供するピアボーナスツールです。IR資料によると、2019年3月時点で240社、26,000アカウントの利用があるとのことです。継続率も99.5%と極めて高く、利用者の満足度の高さが伺えます。

まとめ

以上が、社内通貨・ピアボーナス制度導入のメリット、デメリットについてのまとめです。政府の掲げる「働き方改革」のテーマにぴったりの面白い制度ですよね。しかし、まだ国内では十分に認知されている制度とは言えず、これからの発展や普及に期待したいところです。

 

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